ドラッグストア業界のデジタルシフト(1)取り組み事例~アプリ・電子タグ・AIカメラ~

いまや、私たちの暮らしに欠かすことのできないドラッグストア。ドラッグストアの店舗数は着実に増えており、業界全体を見ても売上の成長が続いています。そして、大手をはじめとした各ドラッグストアがしのぎを削っている状態です。

一方で、デジタル技術が発展しドラッグストア業界に新たな可能性をもたらし始めています。大手ドラッグストアの一部では「デジタルシフト」によってコスト削減や売上向上などの効果を出す試みが、すでに始まっています。本記事では、そもそもの「デジタルシフト」の意味から、ドラッグストア業界の最新事例の一端をご紹介していきます。

デジタルシフトとは?

「デジタルシフト」とはアナログな手法に代わって、経営管理、マーケティング、人材採用などのあらゆる企業活動をデジタルに対応させることです。従来、企業と消費者の接点は、マスメディアや店舗・イベントへの来訪などに限られていました。しかし、インターネットが活用され始めてから、企業と消費者の接点は増え続けています。企業はデジタル技術により、消費者がインターネット上でどのような行動を取っているのかなどのデータログも追えるようになり、消費者の興味関心まで把握できるようになっています。

ドラッグストア業界で進むデジタルシフトへの挑戦

それでは、ドラッグストア業界における最新の取り組み事例を紹介していきます。

■事例1:デジタル集客のための『自社アプリ』
現在は新聞の折り込みチラシといったアナログな集客手法から、自社のWebサイトやSNSなどデジタルな施策での集客手法に変化しています。そして、大手のドラッグストアがこぞって利用しているのが、自社アプリを利用した集客です。自社アプリの活用には、以下のようなメリットがあります。

▼ドラッグストア自社アプリイメージ図(薬王堂公式アプリ)

▼ドラッグストア自社アプリイメージ図(マツモトキヨシ公式アプリ)

・メリット(1):プッシュ力が強く、ピンポイントで集客ができる
自社アプリでは自社のお得なセール情報やクーポンなど、顧客にとって有益な情報をプッシュ通知という形で発信できます。プッシュ通知は顧客のスマートフォン画面に目立つ形で表示される上に、バイブレーションなどで通知がすぐ分かります。このようにプッシュ力が強いのがメリットです。また、ランダムにセール情報やクーポンを発信するのではなく、消費者属性に応じて適切な情報発信が可能です。

・メリット(2):リアルタイムで柔軟な集客が可能
自社アプリでは店舗に※ビーコンを設置して、自店舗周辺にいる消費者に時間限定クーポンを配布するなどのその場に応じた柔軟な情報発信ができます。これにより客足が遠のく時間帯などに、限定のセール情報やクーポンなどの情報を発信して集客することが可能になります。

・メリット(3):消費者情報を取得し、精度の高いアプローチを実現
自社アプリにデジタルポイントカードやスタンプカードの機能を持たせることで、消費者の囲い込みが可能になります。また、企業はポイントカードやスタンプカードの登録時に属性情報の入力を義務付けることにより、使用する消費者の情報をより多く、細かく取得できます。その情報にもとづき、従来より細かい消費者へのアプローチが可能になり、効果的な集客につなげることができます。

※ビーコン:低消費電力の近距離無線技術「Bluetooth Low Energy」を利用した位置特定技術、また、その技術を利用したデバイスのこと。

■事例2:『電子タグ(RFID)』を利用した、店舗オペレーション効率化
企業は電子タグ(RFID※)を導入することにより、商品の検品、入荷、在庫管理、棚卸、販売など多くのプロセスで効率化を図ることができるメリットがあります。
日本チェーンドラッグストア協会は大手ドラッグストア3店舗で電子タグ(RFID)を用いた店舗オペレーションの実証実験を行いました。すべての実験店舗で検品・棚卸作業など、従来と比較して約8割の作業が効率化されたことが報告されています。

▼電子タグ(RFID)を活用しカゴを置くだけで商品を登録
(日本チェーンドラッグストア協会による実証実験)

デジタルシフト事例(2)電子タグ(RFID)「日本チェーンドラッグストア協・実証実験」

(※画像出典:流通ニュース https://www.ryutsuu.biz/it/k021450.html

なお、同じ小売業界のユニクロでは2017年からいち早く電子タグ(RFID)の導入・運用を開始しています。ユニクロの商品タグには電子タグ(RFID)が内蔵されているので、店員や消費者が商品のバーコードをスキャンする必要がありません。また、電子タグ(RFID)の価格の下落もあり、ユニクロはセルフレジの台数を増やし、消費者のレジに並ぶ時間を大幅に削減させ、競合との差別化を図っています。

▼参考:ユニクロ「無人セルフレジ」


▼参考:ユニクロ「商品の電子タグ(RFID)」

デジタルシフト事例(2)電子タグ(RFID)「小売業参考:ユニクロ電子タグ(RFID)」

(※画像出典:流通ニュースhttps://www.ryutsuu.biz/column/k101748.html

※RFID:radio frequency identifier の略。

■事例3:顧客の動きを分析し売上向上を可能にする『AIカメラ』
消費者の動線の可視化を目的とした、AIカメラの導入もはじまっています。
北海道を地盤とするドラッグストアのサツドラは店舗内の消費者の動きを分析するため、店舗内にAIによる分析機能を備えたカメラを96台設置し、商品棚などレイアウト変更の効果測定やマーケティングなどに活用しています。サツドラはこれまでも、会員制のポイントカード「EZOCA」とPOSシステムのデータを基に消費者の属性把握に力を入れていました。しかし、ポイントカードを持っていてもレジで提示しない場合や配偶者のカードを使用している場合などもあり、不正確な情報が混在していましたが、AIカメラ導入により、実際に買い物をした消費者を正確に把握できるようになりました。また、消費者の動線が想定通りになっているかどうかを検証する目的でも、AIカメラを活用しています。サツドラでは、店内の各売り場を映すAIカメラの通過人数をカウントすることで、店舗に訪れる消費者全体の動線を分析しています。

▼AIカメラを設置したサツドラ月寒西1条店内

また、AIカメラは無人店舗運営にも活用することが可能です。ドラッグストアに限らず、小売業では人手不足と人件費高騰が問題となっており、JR東日本リテールネットが運営するキオスクではAIカメラを使った無人店舗の実証実験を行いました。キオスクは無人店舗の実用化を目指し、店舗内に設置したカメラ映像などをAIが解析して、来店者が手に取った商品を認識、退店時に自動決済される仕組みの実証実験に取り組んできました。メリットとしては、企業は人件費を削減することができ、消費者はレジに並ばずに買い物をスムーズに済ますことが可能になります。

▼無人店舗「無人キオスク」外観イメージ

【まとめ】導入のメリット・デメリット~自社アプリ・電子タグ・AIカメラ~

ドラッグストア業界デジタルシフト事例:まとめ

自社アプリ、電子タグ(RFID)には開発や導入費用がかかるというデメリットがありますが、一度導入してしまえば、メリットをひとえに受けることができ、他の業務に時間を割くことができます。
AIカメラでは、店舗内にいる消費者の行動データを商品の陳列に反映させることはすでに可能になっていますが、完全な無人決済の実用化までにはカメラの配置や精度などクリアしなくてはならない課題が多くあります。今後、デジタル技術が発展し店舗への設置費用や人件費を鑑みて、トータルで既存店舗よりもコスト効率が良くなれば、将来的にはAIカメラによる無人決済店舗が普及すると推測されます。

ドラッグストア業界の生き残りに欠かせないデジタルシフト

スーパーなどの他の小売業では、店舗の在庫管理や商品の搬入、店舗の掃除をロボットで管理するなど、より本格的なデジタルシフトの試みがスタートしています。それらと比較すると、ドラッグストア業界のデジタルシフトへの取り組みはやや出遅れているようにも見受けられます。この状態が続けば、将来ドラッグストア業界に電子タグ(RFID)やAIカメラなどが普及した頃には、もう既に他の小売業は店舗の完全無人化まで完了している、といった事態になりかねません。近年、ドラッグストアやスーパー、コンビニなどで取り扱っている商品は類似してきており、今後はこれらの3つの業界において、商品での差別化要因はさらになくなっていくと考えられます。ドラッグストア業界は、他の小売業に飲み込まれないためにもデジタルシフトを先行して進めていく必要があるのではないでしょうか。

Writer Profile

松本匡平
株式会社ADDIX デジタルビジネス事業部 事業推進ユニット ライフサイエンス&スポーツチーム

ADDIX_Matsumoto_Kyohei

千葉県松戸市生まれ。大学時代、学外活動で山梨県丹波山村の地方創生事業に携わり、ジビエ肉加工工場設立に貢献。その後、他大学の仲間と共にグルメアプリを開発。その経験からデジタル領域に興味を持ち、2019年に企業のデジタルシフトを支援するADDIXに入社。現在は、デジタルビジネス事業部ライフサイエンス&スポーツチームに所属し、産業調査・分析を担当している

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