富士通など大企業の技術を自社商品に!「技術のシェア」開放特許が拓く知財活用の新時代

(※富士通株式会社 法務・コンプライアンス・知的財産本部 知的財産イノベーション統括部 ビジネス開発部 部長 広瀬勇一氏)

「開放特許」という言葉をご存知でしょうか。特許といえば、一般に権利を保有する企業による独占排他的な利用をイメージしがちですが、広く一般に開放された特許を開放特許といい、ライセンス契約を結ぶことで特許権者以外の企業や個人などが自社ビジネスに活用することができます。

株式会社ADDIX(以下、ADDIX)が運営する「シェアトッキョ」は、この開放特許をヒト・コト・モノのシェアに次ぐ「技術のシェア」という新たな目線で捉えなおし、今までにない出会いや活用アイディアの共創を育む場として生まれました。権利者も利用者も、アイディア提供者までもがハッピーになれる知的財産の活用とは? 第一弾企業として「シェアトッキョ」にて開放特許の技術を掲載された、富士通株式会社 知的財産イノベーション統括部 ビジネス開発部 部長 広瀬勇一氏にお話を伺いました。

【お話を伺った方】
富士通株式会社 法務・コンプライアンス・知的財産本部
知的財産イノベーション統括部 ビジネス開発部 部長 広瀬勇一氏

登録された特許の半分は未利用?!「開放特許」が生まれる背景とは

–まず最初に「開放特許」についてご説明いただけますか?

富士通株式会社 広瀬勇一氏(以下、広瀬氏):
簡単に言いますと、企業が保有している特許のうち、第三者に利用させることを目的として外に向けて開放しているものが「開放特許」です。

特許庁に登録された特許件数は160万件を超えるといわれていますが(※1)、実は利用されている特許は約半分で、残り半分は未利用です。未利用特許の有効活用も含めて、良質な技術は広く世の中に開放して社会課題の解決や新たな事業の創出に役立てていただこう、ということです。

–なぜそんなに未利用の特許があるのでしょうか?

広瀬氏:
未利用特許が生まれる理由は、市場の成長を見込んで技術を開発したけれども予想よりも市場規模が伸びなかったですとか、事業の選択と集中の結果、その技術を用いた商品の開発が中止になったりですとか、さまざまです。ファックスやポケベルのように技術そのものが古くなってしまうこともあります。

富士通の事業はICT分野を中心とした特定の領域に限定されます。しかし、事業領域外のフィールドでも有効に活用できるのではないかと思われる特許も少なくありません。そのようなものを開放特許として公開しています。

(※1)出典:特許庁「特許行政年次報告書2018年版」第1部第2章:1-2-13図 国内における特許権所有件数及びその利用率の推移(全体推計値)
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2018/honpen/0102.pdf

知財管理は「権利行使」から「活用促進」へ。特許権者と利用者の両方がハッピーに

–「シェアトッキョ」についてうかがいます。御社が「シェアトッキョ」第一弾企業として手を挙げられた理由とは?

(※富士通株式会社 法務・コンプライアンス・知的財産本部 知的財産イノベーション統括部 ビジネス開発部 部長 広瀬勇一氏)

広瀬氏:
伝統的な知財活用というと権利行使を前提とした敵対的なものが少なくありません。私は、権利者と利用者の双方がハッピーになれる構図こそが本来の知財活用の姿だと考えています。自社で使っていない特許は、開放特許として積極的に外部にお知らせして広く活用していただこう、という方向ですね。

今回、ADDIXさんがインターネットを活用した開放特許との出会いの場を新たに作られるとお聞きしまして、私たちもぜひ参加させていただきたいと思いました。「シェアトッキョ」というネーミング、そして「技術のシェア」というキーワードには、実は最初は少し違和感がありました。特許は独占するもの、というイメージとの違和感ですね。でも時間が経つごとに、特許に対する堅いイメージを払拭するとても良いネーミングだと思うようになりました。今までの取り組みとは違った新たな出会いが、「シェアトッキョ」を通じて生まれることを期待しています。

富士通保有の開放特許の活用事例ご紹介

-御社が公開している開放特許の活用事例をご紹介ください。

【事例1】印刷画像へのコード埋め込み技術(代表特許:特許第4260781号)※シェアトッキョ掲載技術
・写真とデジタルコンテンツをリンクする技術
・マーカーレスでデザイン性を損ねない点が特徴

広瀬氏:
導入実績は8社です。今日は、こちらにおせんべいを持ってきました。この画像に専用アプリをインストールしたスマートフォンをかざすと、読み込まれたコードにリンクしている画像や動画などのコンテンツが表示されます。アプリは、AppStoreでダウンロードできます。

(※富士通の開放特許「印刷画像へのコード埋め込み技術」を用いて印刷された南部せんべい)

印刷物とデジタルコンテンツをリンクさせる場合、ほとんどの場合はQRコードで事足ります。ただ、このおせんべいのような食品にQRコードを印刷する、というのは見た目的によろしくない。もともとこの会社はARのマーカーをおせんべいのド真ん中に印刷されていまして、そのマーカーを取る方法はないか?ということで、私たちの技術に興味を持ってくださいました。

–この技術は食べ物に使われることが多いのでしょうか?

広瀬氏:
いいえ、パンフレットでの利用も多いです。お祭りの案内ですとか、ご当地の名所案内ですね。面白いところでは、今はもう販売されていないのですが、清水寺で電子おみくじというものを売っていたことがあります。安くはなかったのですが、一定の期間でコンテンツが更新されているので、1度見て終わりではなく何回も楽しめるものでした。

「シェアトッキョ」でもこの技術をご紹介しています。いろいろなことに使っていただける技術ですので、ぜひどう使ったら面白そうか考えていただきたいですね。

【事例2】光触媒技術(代表特許:特許第3928596号)
・カビやウイルスなどを吸着して不活性化し、光の作用で分解するチタンアパタイト材料技術
・吸着性に優れ樹脂材に適用できる点が特徴

(※富士通の開放特許「光触媒技術」で用いられるチタンアパタイトの粉末材料。)

広瀬氏:
ここには、光触媒チタンアパタイトの粉末材料と、この材料を配合した石けんとマスクを持ってきました。この技術は24社の実績がありまして、さまざまな商品に使われています。

光触媒チタンアパタイトは、菌類や花粉などの有機物を吸着し、光(紫外線)をあてると水と二酸化炭素に分解する性質を持っています。世の中にはいろいろな抗菌製品がありますが、吸着した物質が堆積されず分解されてそのものがなくなってしまうのがこの素材のすごいところです。

もともとは私たちのキーボードや人の手に触れる製品などの抗菌性を確保するために、開発しました。ところがコストや量産技術の確立等の面で自社活用を断念した、という事情があります。

(※富士通の開放特許「光触媒技術」チタンアパタイト配合の石けんと、チタンアパタイト粉末材料)

こちらの石けんは、川崎市の養生資材卸業を営む企業から販売されている商品です。川崎市のマッチング事業で私たちの技術を知り、興味を持っていただきました。お父様から事業を引き継いで、何か新しいことを自分たちも立ち上げたいと思われていたそうです。

そこで、光触媒チタンアパタイトの吸着性能に着目して、石けんの開発にチャレンジしてみようということになったようですが、製品化までは苦労も多かったそうです。チタンアパタイトが香りまで吸着してしまうため香料の配合に苦労したり、パッケージの表現でも慎重に検討されたそうです。高価な石けんですが、まずまずの評判のようです。

こちらのマスクは中間層に光触媒チタンアパタイトが適用された不織布が使われています。光を当てると吸着した花粉や菌類を分解してくれるのです。使った方が皆さんからは「少し長い期間使用していても臭くならない」という声を耳にすることがあります。食事をしたあとでも、このマスクによって匂いが分解されるためそのような効果が感じられるのかもしれません。

【事例3】水没防止技術(代表特許:特許第5272783号)※シェアトッキョ掲載技術
・水没させてしまった物品を浮上させる技術
・水圧が高まると浮き袋内にガスを充填させ、浮力を得る仕組み
・水没してしまい、回収を諦めざるを得なかった物品の回収が可能に

広瀬氏:
水没した時にだけバルーンが膨らむ、というのが特徴の技術です。この技術もスマートフォンなどの水防防止だけではなくさまざまな用途があると思いますので、「シェアトッキョ」のサイトを通じていろいろな切り口からの活用アイディアをお待ちしています。

お金だけが全てじゃない!「シェアトッキョ」という場に開放特許が集う未来へ

–最後に「シェアトッキョ」と開放特許について、今後の展望をお聞かせください。

広瀬氏:
ここ数年、地方自治体や金融機関などにお声がけいただき、全国各地の知財マッチング会や学生さんのアイディア創出の場に参加して、弊社の開放特許を地域の企業の皆様にご紹介する機会を多くいただくようになりました。

そこでは「地元の企業に就職することにしました!」「就職先は中小企業にします」と言ってくださる学生さんもいますし、私が地方で出席したイベントを見学したことがきっかけで富士通に興味を持ち、入社してくださった方もいます。

私たちが開放特許の活用を推進するのは、お金が目的ではありません。地方の産業振興への貢献はもちろん、それぞれの地域や私たち自身の会社の人材確保やモチベーションにも少なからず結び付いています。

この活動に賛同してくださる大手企業が徐々に増えつつあります。将来は「シェアトッキョ」に多くの大手企業が参加し、新たな知財活用のムーブメントを引き起こし、さらなる知財活用の魅力発信に繋がることを願っています。

text/Keiko Matsumoto(ADDIX)

■富士通株式会社
http://www.fujitsu.com/jp/

 

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シェアトッキョ

シェアリングエコノミー市場が活性化する中、“技術”のシェアが誕生!
「シェアトッキョ」は、特許権にひもづいた良質な技術を、自社の商品開発などに活用することができる技術シェアサイトです。第一弾として、富士通株式会社の開放特許をご紹介しています。
https://www.addix.co.jp/share_tokkyo/fujitsu/

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