情報があふれる時代に、今あらためて注目される「イラストマーケティング」

Illustration by Saina Six, horizart.com

インパクトとストーリーテリングを同時に叶える、「イラスト」という手法

日々膨大な情報量にさらされる現代。情報の洪水を乗り切るために、私たちはますます「パッと見」で、必要な情報かどうかを判別するようになってきています。そんな時代の広告やコンテンツには、スマホやPCの画面をのぞくわずかな時間で強く目をひきつけるビジュアルインパクトがとても重要です。そして、今やユーザーが求めるものはそれだけにとどまらず、インパクトの先にある、ブランドや商品、サービスにまつわるストーリーや世界観にまでも広がっており、企業にはその期待に応えることが求められています。そんなブランディングの高度化にともなって、今あらためて注目を集めているのが、写真広告よりも長い歴史を持つ「イラストマーケティング(※)」です。

「イラストマーケティング」とは、イラストなどのアートによってブランディングを実現すること。より洗練された自分の感覚を大事にする女性たちをターゲットとした商品では、マーケティング活動において今後ますます欠かせない存在になっていくことが予想されます。BWRITEでは、この「イラストマーケティング」について独自の調査を実施。データ分析の結果から、「イラスト」を使った広告の特徴や「イラストマーケティング」を成功させるためのポイントを、「写真」を使った広告との比較によって探りました。

※「イラストマーケティング」:
企業のマーケティング活動の一環として、イラストを活用したブランディングを行うこと。広義には、イラストを活用した企業のマーケティング活動全般。具体的な例としては、ブランドイメージを伝えるためにイラストを使用したCMやポスター、ムービーを作成することなどが挙げられます。ヨーロッパでは長い歴史を持ち、イラストを積極的にマーケティングで使用し、新しいアートを企業が自ら世の中に発信することで、洗練されたブランディングに成功しています。

「親しみやすさ」がポイントの人物画像には、「イラスト」が効果的?

今回のBWRITEの調査では、画像以外は全く同じ内容の「WEB広告」と「Facebook記事」について、「イラスト」を用いたサンプルと「写真」を用いたサンプルとを作成。WEBアンケートにより、20代以上の女性にその印象と広告文についてのテストに答えてもらい、「イラスト」と「写真」、それぞれのメリットや特徴について分析しました。

<テストに使用した広告サンプル>

「【A】WEB広告」
サンプル画像(BWRITE広告)

「【B】Facebook記事」
サンプル画像(FB記事)

その結果、今回の調査では、広告文の内容の理解度や好感度については、「WEB広告」「Facebook記事」ともに「イラスト」の場合と「写真」の場合とに大きな差はありませんでした。

さらに詳しく見ていくと、女性の人物画像を使用した「WEB広告」について、「イラスト」「写真」どちらの場合でも、「親しみやすいか」「楽しいか」「深みがあるか」が、「好き嫌い」「良し悪し」に影響していることがわかりました。

「イラスト」の場合は、「親しみやすさ」が特に、「好き嫌い」「良し悪し」に大きく影響していました。つまり、「親しみやすい」かどうかが、イラストに好意的な印象を与えるための重要なポイントのようです。

(表1)【A】重回帰分析結果

また、同じく「WEB広告」について、「イラスト」と「写真」の印象を比較したところ、「イラスト」は「写真」に比べて、「温かい」「理知的である」「質素」と評価されていました。「親しみやすさ」においても、「イラスト」のほうが「写真」よりも「親しみやすい」という結果でした。

(表2)【A】t検定結果

今回の結果から、人物画像を使用した広告などでは、「親しみやすさ」が「好き嫌い」「良し悪し」を決定づける重要なファクターであることが推測されます。「写真」を広告に使用する場合には、被写体となった人物に対する「好き嫌い」などの先入観が広告の印象に良くも悪くも影響を与えます。しかし、架空の人物を「イラスト」を用いて表現した場合には、被写体と連動した先入観の影響を避けることが出来るだけではなく、タッチやニュアンスに適切にコントロールすることで、写真よりも容易に「親しみやすさ」を表現することが可能です。マーケティング活動において、自社ブランドへの「親しみやすさ」をどのように表現し、伝えるかには様々な手法が考えられますが、「イラスト」はその中でも非常に効果的なコミュニケーション手法のひとつになりうるのではないでしょうか。

センスがカギ!大きな可能性を秘めるイラストのマーケティング活用

「イラスト」を使用した場合、「実写」と違って表現に制限が無いため、空想上のストーリーや、描線のタッチなどの繊細なニュアンスを用いて、ブランドイメージを自在に表現できることが魅力のひとつといわれています。

実際、エルメス、ティファニーといったラグジュアリーブランドから、ポールアンドジョー、RMKなどのコスメブランドまで、女性の心をくすぐるブランドの広告や商品では、「イラスト」が効果的に使われていることが少なくありません。たとえば、ティファニーでは、FacebookなどのSNSにイラストとプロダクトを組み合わせた画像を投稿し、プロダクトの写真だけでは伝わりきらないブランディングの表現に多くの反応を得ています。この試みから、その他のジュエリーブランドでもイラストの使用が増えています。ハイブランドの公式サイトを訪れた時に、フレンドリーな「イラスト」を使ったムービーに出迎えられて、近寄りがたい空気がふっとやわらいだ記憶がある方も多いのではないでしょうか。

そして、依頼するクリエイターなどにもよりますが、多くの場合、「イラスト」や「イラストムービー」を用いた広告は、実在の人物やセット、撮影スタジオや専門の機材と多くのスタッフを必要とする「実写での写真や動画」を用いた広告よりも、低コストで製作できるというメリットもあります。限られた広告予算の中で、目的に応じて「実写」と「イラスト」とを上手く使い分けることで、より効果的なブランディング活動を行うことが出来るといえそうです。

単純な広告費用の規模の大きさではなく、センスやアイディアがマーケティングの成否を決定することも増えてきている今、「イラストマーケティング」の効果的な運用が、今後ますます求められていくのではないでしょうか。

<今回調査の質問項目/分析手法の概要>

「【A】WEB広告」と「【B】Facebook記事」のそれぞれについて、画像以外は全く同じ内容のテスト用サンプルを、「イラスト」を用いたものと「写真」を用いたもの、それぞれ2点づつ計4点作成し、それぞれについて、ABテスト方式を用いたWEBアンケートによって「評価項目」と「理解度チェック」を実施。調査設計と統計解析ソフト「R」を用いた多変量解析によるデータ分析をADDIXコンサルティング&ソリューション ユニット所属の女性メンバーが担当し、「イラスト」と「写真」のそれぞれのメリットや特徴について検討を行いました。

【設問内容】
◇「評価項目」リスト◇
印象を答えてもらう設問と、「好き嫌い」などの評価を答えてもらう設問からなる。計21問。(下表参照)

イラスト効果調査_評価項目

◇理解度チェック◇
【A】【B】それぞれに即した内容で、広告内の文章や画像について記憶している内容を答えてもらう選択式設問。(【A】【B】各4~5問)

【分析手法】
重回帰分析(※2)t検定(※3)、因子分析(※4)

【使用ソフト(言語)】
R(https://www.r-project.org/

<調査概要>
「広告画像についての意識調査」(調査実施:BWRITE)
【調査実施期間】
2015年9月17日(木)~ 9月23日(水)<7日間>
【調査対象・人数】
20代~40代の「Skets」会員女性 147名(有効回答)
【調査方法】
WEBアンケート方式
【アンケート収集元】
共創コミュニティサービス「Skets」

【調査設計・分析】
株式会社ADDIX
コンサルティング&ソリューション ユニット 新井里奈子

【イラスト素材提供】
「Horizart(オリザル)」http://horizart.com/jp

【広告サンプル作成】
BWRITE編集部

※2:重回帰分析:複数の説明変数(X1、X2…)から、1つの目的変数(y)を説明する分析手法。
※3:t検定: 2変数の差が誤差ではなく統計的に有意な差であるかどうかを検討する、有意差検定の手法のひとつ。
※4:因子分析:質問項目(測定された変数)から背景にある潜在的な因子を導出する分析手法。

※BWRITEが実施した調査についてのご質問、レポートのご希望は、問い合わせフォーム(https://www.addix.co.jp/services/#contact)より、プルダウンで「BWRITE(ブライト)」を選択してお問い合わせください。

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